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伝わらない歯がゆさ『ミラクル・ニール』

イギリス発のコメディ映画『ミラクル・ニール』(原題: Absolutely Anything)。今は亡き名優「ロビン・ウィリアムズ」が出演した(声のみ)最後の映画としても、注目されました。

『ミラクル・ニール』の主演は、私の大好きな俳優サイモン・ペグです。サイモン・ペグが出演する映画で初めて見たのは、超B級ゾンビ映画『ショーン・オブ・ザ・デッド』。超B級はもちろん誉め言葉です!『ショーン・オブ・ザ・デッド』も同様にイギリス映画で、当時イギリス映画をあまり見ていなかった私にとって、イギリステイストのコメディは新鮮でした。その後『ミッション:インポッシブル』シリーズで「あれ、この人、見覚えがあるような・・」となったのがサイモン・ペグでした。サイモン・ペグは、この他にも『スター・トレック』シリーズや『スター・ウォーズ』などの大作に出演していますね。

『ミラクル・ニール』は、サイモン・ペグの魅力が詰まった、軽い気持ちで見られるおもしろい映画でした。90分もないぐらいなので、サクッと楽しめます。そしてなにより、英語を勉強している私にとって、たくさんの「英語的な」笑いどころがありましたので、英語好きの方にも、ぜひ見ていただきたい作品です。

以下、少し本編に触れます。

あらすじ

宇宙人から何でも叶えることのできる能力を与えられたニール。ニールが願い事を唱えて、さっと右手をふれば、愛犬が喋ったり、アメリカ大領領になったり、死者がゾンビになって甦ったり・・・。愛する女性に振り向いてもらうため、ニールはそのミラクルな力をどう使うのか・・!

劇中でちょくちょくあるのが、言葉足らずに願い事を唱えてしまうので、思ったように願いが叶わないというシーン。そんなのが、テンポよく畳みかけてくるもんだから、通勤電車で笑いをこらえるのに必死でした(スマホで観ていました)。

中でも、同僚「レイ」の片思いを叶えてあげようとするのですが、これがどえらいことになってしまいます。

Let Miss Pringle Worship Ray

レイは同僚のドロシー・プリングルにアプローチするも、ドロシーの態度はつっけんどん。レイは、もっとドロシーに好かれたいとニールにこぼしていました。ニールは、相変わらずレイに冷たいドロシーを見て、レイのために(ふざけ半分?)叶わぬ恋を叶えてあげます。

"Let Miss Pringle Worship Ray"(ドロシーはレイをWorshipしろ)

ニールがこういって右手を振ると、ドロシーは途端にレイにうっとり!ちょ、ホイッスルw

ですが、ニールのこの願い事もやっぱりおかしなことになってしまいます。ドロシーは、レイを "Worship" という言葉通りに崇めはじめ、信仰の対象に祀り上げてしまいます。レイはインド系(?)で、その面立ちから、いかにもな絵柄になります!

Worship の意味

"Worship" の基本的な意味は、宗教上の「崇拝する」ですが(熱狂的なクリスチャンは "let us worship him"(神に身を捧げよ)と使うそう)、レトリックとして「熱狂的に好き」「ドはまりする」といったユーモラスな使い方ができるようです。

そのため、ニールは「レイにベタ惚れになれ」ぐらいに思って "Let Miss Pringle Worship Ray" と唱えたつもりだったのでしょうが、願い事は「信仰し、崇拝しろ」「身を捧げよ」というニュアンスで叶えられてしまったわけですね。

思うように意図が反映されないおもしろさ

劇中、ニールは願い事を何度も唱えますが、言葉足らずなことから、どうにもうまく反映されません。バスに移動しようと思っても、バスの上に移動してしまうし、じゃあバスの中に移動しようと思っても、バスのボンネットの中に移動してしまったりと、散々な目に遭います。

翻訳の仕事をしていても思うことですが、実際に私たちが話す言葉というのは、かなり言葉足らずなものです。翻訳においては、その足らない言葉を補うために、発話者や作成者の意図をどれだけ正確に汲み取り、自然な言葉として柔軟に訳出できるかというのがミソになります。

もっとも、曖昧さを嫌う英語に比べて、日本語の方がよっぽど言葉足らずなところがあるのですが・・

自動翻訳や機械翻訳などは、このあたりのことが課題になり、「ディープラーニング」などさまざまな手段が生まれています。

ところで、『ミラクル・ニール』は宇宙人が地球を滅亡させるかどうか判断するため、ある人間(ニール)にミラクルな力を与えて、その人間がどのように振る舞うかを観察するという内容なんですが、この設定、どこかで見たことがあるようなないような・・こち亀でしたっけ?

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